不倫の示談における守秘義務について
1 不倫慰謝料請求の実務においては守秘義務を課すことが多い
不倫慰謝料に関する示談が成立し示談書を作成する際には、不倫の事実等について、当事者が口外しない旨の条項を設けることが多いです。
この条項は、守秘義務のほか、「秘密保持」や「口外禁止」という名称が用いられることもあります。
実際には、守秘義務を課すことは、不倫慰謝料に関わる示談に限らず、和解の際に広く用いられています。
加害者側としては、民事または刑事上違法な行為をした事実を人に知られたくないと思うのは自然なことであると考えられますし、被害者側も解決金として支払われた金額などを他人に知られたくない、ということもあります。
以下、示談における守秘義務に関する条項、守秘義務と慰謝料の関係、示談内容を口外することのリスクについて説明します。
2 示談における守秘義務に関する条項
一般的には、示談書の中に「甲と乙は、本件和解の内容及び本件和解に至るまでの間の協議等の経緯について、正当な理由がある場合を除き、第三者に開示又は漏洩しないものとする。」というような条項を設けます。
守秘義務に違反した場合の違約金の定めなどを設けることもあります。
3 守秘義務と慰謝料の関係
一般的には、不倫の示談において守秘義務に関する条項を設けたいと考えるのは、不倫をした側(加害者側)です。
不倫はイメージが悪く、仮に不倫をした事実が周りに知れ渡ってしまうと、社会的な信用を失うことになりかねないためです。
守秘義務が課される場合、被害者側としては、積極的に秘密が漏洩しないように注意する義務を負うことになります。
不倫の事実を口外すること自体、後述のとおりリスクを負うことであるものの、守秘義務条項によって加重的な義務が課される以上は、慰謝料の増額交渉の要素ともなり得ます。
4 示談内容を口外することのリスク
守秘義務の有無にかかわらず、不倫の事実を第三者に伝えたり、伝えることを告知して何らかの要求をすることは、損害賠償請求および刑事罰の対象になる可能性があります。
例えば、不倫の事実を不特定多数に伝えることは、名誉棄損の罪が成立することがあり、併せて損害賠償請求もなされる可能性があります。
また、示談書に定められた慰謝料とは別に金銭の支払いを要求し、支払わない場合には不倫の事実を第三者に伝えると告知して金額を受け取った場合、恐喝の罪が成立することがあります。